2024年7月退職、FIRE民への仲間入り予定のゆんのブログです。

資産形成やFIRE後の生活、人生を充実させるための方法について発信していきます。

【株式銘柄分析】藤商事 6257 過去の判断を振り返る|抗えない市場の縮小の中で利益を出し続ける企業を長期保有するかどうか

藤商事の過去10年間の株価推移グラフ1200円を中心として上下している
藤商事の過去10年間の株価推移

手持ちの株式銘柄を分析して過去の判断が良かったのかどうか反省していきます。

今回は藤商事を検証します。この銘柄は配当利回りが高いのが特徴です。

私は2024年7月にカナダに渡航する予定して数年以上滞在する予定で、その前に資産を整理整頓しようと考えています。

日本株は原則としてほぼすべて売却してしまう予定なのですが、この株は配当利回りが高いので、例外として継続して持ちつつづける価値があるかどうかと言う観点で検証していきたいと思います。

藤商事買い付け履歴

この銘柄は主に2018年に複数回に分けて購入しています。海外在住中の国内株式の売買は私の証券会社では禁止されているため、渡米した2020年から現在(2024年3月)の間の機関には一度も取引していません。

藤商事買い付け履歴
藤商事買い付け履歴

2024年3月現在分析

それでは直近の状況をレビューしていきます。

藤商事は大阪に本社を持ち、パチンコやパチスロのマシンを開発、製造、販売している会社です。

財務分析の前に私が手放すことを視野に入れている理由、すなわち懸念材料を挙げておきます。

■藤商事を持っていていいのか不安な要素(私見)■
  • パチンコ、パチスロは現代の世の中では流行らなさそう。昭和~平成の遊びのイメージがある

レジャー白書によると日本国内の業界売上高は減少の一途をたどっているとのこと。

日本も少子高齢化で経済は縮小していくので娯楽、遊戯に投資するのかいい戦略なのかかなり疑問です。

それでは分析に入っていきます。

連結損益計算書と定性的情報

まずは直近の損益計算書を見てみます。

本当は会計年度通年のものを見るのが良いですが、この記事執筆時点では第3四半期終了時点、つまり1年のうち4分の3が終わった時点での損益計算書しか出ていません。

でもまあ4分の3経過していれば大体の傾向はわかるのでよしとしましょう。

2024年3月期連結損益計算書
2024年3月期連結損益計算書

売上高は26,607百万円から29,626百万円と10%以上の伸びを見せています。それに伴って営業利益も4,437百万円から5,243百万円に伸びています。

すばらしい!と思いましたが、ちょっと冷静になろうと思います。

パチンコ・パチスロ業界は市場が縮小していて今後の展望も明るくはないはずです。

なのになぜこんなに売上と利益が伸びているのでしょうか?この売上と利益が本当に実力で伸ばした健全な成長なのかをもう少し深く確認する必要がありそうです。

そこで、昨年以前の売上と利益も確認するとそこもやはり売上と利益が伸びていました。

決算資料で参加人口と遊戯機とホール件数の推移を確認すると全体としては縮小規模にあります。

しかしよく見るとパチンコの減っている台数は減っているのですがパチスロの市場台数は伸びているんですね。

そして藤商事の売上構成もパチンコが減ってパチスロが増えていました。

なんとなく売上が伸びているのはまともな状況であることが見えてきました。

決算短信に書かれている定性的情報に目を通しましたが、「景気や緩やかな回復が続くことが期待されます」と直近の経済状況に触れてはいるものの長期的な展望については書かれていませんでした。

決算説明資料には新製品の予定などがいろいろと書かれていましたので、市場規模の縮小は続くものの積極的な新製品開発によって売上と利益の増加を維持しているとみてよいと思いました。

ここまでの分析でいったん以下のような考えになっています。

■損益計算書、決算資料、長期的展望を考慮した暫定結論■
  • 経営陣は厳しい市況の中よく頑張っている
  • 市場は長期的に縮小傾向にあることは間違いない
  • 長期的に見ればジリ貧かもしれない
  • それでも経営努力によってジリ貧の市場の中でも安定配当を維持してくれそうなので、数年以上保持する銘柄として妥当

正味流動資産計算

次に正味流動資産を計算します。

バリュー投資の父、グレアムは正味流動資産が株価を下回る分が安全域であると述べています。

安く買えば買うほど値下がりのリスクが小さく値上がりの余地が大きいのでリスクとリターンが比例しないのがバリュー投資の特徴です。

正味流動資産の計算も本当は通年のものを使うのが良いですが、第3四半期終了時点のものでも問題ないのでこちらを利用します。

2024年3月期 四半期連結貸借対照表
2024年3月期 四半期連結貸借対照表

正味流動資産は基本の考え方は流動資産からすべての負債を引くというものです。

しかし私の場合は過去の痛い思い出があるので在庫に相当する分を流動資産と見なさないというルールにしています。

一方で投資有価証券は子会社や関連会社の株で市場に流通することのない株なのですが、子会社や関連会社もある程度お金を持っているはずなので投資有価証券はその額の50%を流動資産として評価したいと思います。

19,629 + 6,200 + 1,384 -139 + 4,352 x 0.5 = 29,250

在庫に相当する分は足さずに、貸倒引当金は引き算して計算すると29,250百万円となりました。

ここからすべての負債を引き算します。

2024年3月期 第3四半期決算短信 貸借対照表負債の部
2024年3月期 第3四半期決算短信 貸借対照表負債の部

負債合計は10,348百万円でした。

よって正味流動資産は29,250百万円 - 10,348百万円 = 18,902百万円

執筆時点の株価は1,343円です。発行済み株式数は24,395,500株ですので時価総額は32,763百万円となりました。

現金等価物で正味18,902百万円の入った財布を32,763百万円で市場は取引していることになります。

ベンジャミン・グレアムの提唱するバリュー株の条件は満たしませんが、彼の時代は今とは違います。

これだけ厳しい経営環境にありながら高配当を出し続けているという企業価値を考えるとまずまずの価格であると言えます。




反省結果まとめ

結果をまとめます。

  • 市場の縮小傾向は変わらない
  • 経営陣はその中でも売上と利益を伸ばしていてがんばっている
  • ジリ貧でも高配当を維持すると期待できる
  • 数年にわたって保持する価値はある

というわけで、安定的な高配当という好材料と市場の縮小と言う懸念を天秤にかけ、私はこの株を買い増しもせず、売却もせず、同数の株を向こう数年間は保有し続けたいと思います。(数百株だけ売ってREITに回すなどの微調整はするかもしれません)


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