学びの原点は反省です。
今後の成長のために過去の投資を振り返っていきたいと思います。
今回は2018年に買ったきり、2024年2月執筆時点までずっと放置している進学会ホールディングスについて銘柄分析をしていきたいと思います。
今回の銘柄は進学会HDです。私がまだ株式投資を始めて間もない2018年に670円で800株を買い付けました。
6年経過した2024年2月28日現在267円で取引されています。6割ほど株価が下落しています。
はたしてこの買い物は失敗だったのか検証していきます。
2024年2月現在分析
2024年3月期連結損益計算書と定性的情報
いきなり度肝を抜かれます。
たったの30億円しか売り上げがないのに11億円も経常損失が出ています。というか営業利益の時点ですでに11億円の営業損失となっています。
ど、ど、ど、どうやったらそんなに赤字になるんですか!!??
おそるおそる上の方に目をやると、なんと売上原価の時点ですでに売上を上回っています。130円で仕入れて100円で売る商売!ふつう逆っ!!
営業利益というのは本業のもうけなのでここで赤字が出ているという事は何かやむを得ない特殊な事情で事業が困難になっているのでしょうか。そうでなければ、やらない方がマシな事業という事になってしまいます。
どういった経営環境だったか確認するために「当四半期決算に関する定性的情報」と言う部分を見てみます。
コロナ禍で不採算会場を閉じた影響で売り上げにおいて計画を下回る結果となりました
売上の説明はあるけど肝心の損失の説明が全然ないんですけど!?!?
不採算なところは閉じると採算が向上するんですよね。
「赤字だからやめました。だから売上は下がりましたが利益が上がりました(または赤字が縮小しました)」と言う説明にならないといけないはず。
しかし売上が下がった説明しか書いていないのです。
「コロナ禍で不採算会場を閉じた」んだったら売上は下がっても採算は改善するはず。
もう一度損益計算書見てみて下さい。前期より売上下がっているのはわかりますが、営業損益の額むしろ増えてるじゃないですか。
この損益計算書が意味するところは、より少ない売上で同じ損失を出しているので、より効率よく赤字を出しているという事になります。
より効率赤字を生むって・・・
ここまで疑問がたくさんわいてきましたが、私はこの経営者の問題点が分かってしまいました。
実はこの会社の経営陣は売上と利益の違いが分かっていなかったのです。
売上と利益の違いが分かっていないので、売上が低いことを不採算と呼んでいたのです。通常は利益率が低いことを不採算と言います。
そう考えるとこの「当四半期決算に関する定性的情報」がなぜこのような説明になっているのかつじつまが合います。
これを踏まえてもう一度「当四半期決算に関する定性的情報」に戻ります。
全国の直営会場体制に関しては採算性の重視とスピード感のあるスクラップ&ビルドにより、質と量の両面において教室網の強化を進めております。
売上と利益の区別がついていない経営者がスピード感をもってスクラップ&ビルドを進めるそうです。
つまり、各店舗の利益率とは関係なく売上の小さいところから順に閉鎖していくものと思われます。
やばすぎる。
正味流動資産計算
本銘柄を選んでしまった失敗とは直接関係ないので省略します。普通はバリュー投資家にとってバランスシートのレビューは重要項目なのですが、今回の失敗はもっと根本的に別の原因でした。
2024年2月のレビュー結果
- 買ったのはバリュー投資で言うところのシケモクではなく、犬の糞以下だった。*1
- やばすぎる経営感覚(売上と利益を混同。もしくは売上しか見ずにコスト計算ができていない)で今後も赤字は拡大もありうる
- 経営陣が変わらない限り自力での赤字体質からの脱却はおそらく不可能
それでは次に本題となる、買い付けた6年前当時はなぜこの銘柄を買いだと思ってしまったのかについて反省します。
当時買い付け理由(2018年1月)
進学会HDのIR情報サイトで当時の決算短信を確認します。
進学会HDのIR情報サイトで確認ができる私が買い付けを行った2018年1月の直近の決算短信は平成29年3月期決算短信(2017年5月)のものでした。
正味流動資産計算
正味流動資産の計算の方法はいろいろと流派がありますが現在私が採用している方法で計算します。
正味流動資産(自己流)= 流動資産(棚卸資産は50%で計算) + 投資有価証券 x 50% = 14,633,293 + 2,263,432 = 16,896,725(千円)
投資有価証券とは関連会社や子会社の株です。市場で流通しないのですが、まったく価値が無いとみなすのも酷なので半額ぐらいの貨幣的価値があるであろうという事で半額にした額を流動資産に足しこんでいます。
流動資産のうち在庫にあたる商品および製品、仕掛け品、原材料費及び貯蔵品は売れるかどうかわからないため価値ゼロとみなしています。
こうして求めた正味流動資産を当時の発行済み株式数で割ります。
当時の発行済み株式数は20,31,000株だったので一株当たりの正味流動資産は16,896,725(千円)÷20,031,000 = 843.5円
つまり一株当たり843.5円の価値がある状態だったわけです。それを670円で買っているわけですね。
670÷843.5 = 0.79%
価値の8割弱で買っています。
ベンジャミン・グレアムが提唱したバリュー株の定義は株価÷一株当たり正味流動資産<2/3*2です。
よってバリュー株の条件は満たしていませんが、正味流動資産の観点のみで言うなら悪い判断ではありません。足きりライン通過と言う感じです。
しかし、グレアムはバリュー株に該当するだけでは買い付けると判断することはできないとしています。
過去に赤字になっていないことなどを上げていますので損益計算書を確認してみます。
2017年3月期連結損益計算書と定性的情報
当時の損益計算書を見て私の失敗の原因が分かりました。
結論から言うと損益計算書から利益がちゃんと生み出せる経営体質になっていないことが読み取れていなかったのです。
予兆はこの損益計算書にはっきりと表れていました。
私は下から損益計算書を見ていくのですが、経常利益が倍以上になっています。記憶は定かではありませんが、当時の私はこの時点で満足してしまったのだと思います。
しかし、本業の儲けを表す営業利益の部分を見ると半分以下になっていることが分かります。
売上の伸び率よりも売上原価の伸び率の方が大きいのです。
さらに営業利益と経常利益の間を見ると、今期の経常利益が増えたというよりは、前期の営業外費用のうち持ち分法による投資損失と為替差損が減っていることが分かります。
つまり、本業のもうけとは関係ないどうでもいい損失がなくなっているために経常利益が増えているだけで、売上を伸ばすとそれよりコストが上がるという赤字体質は6年前からすでに存在していたのです。
この時点で買い付けの対象外としなければなりませんでした。
損益計算書は上から見ていくのがいいのだと思いました。
これを頭に入れた上で経営成績の概況を見てみます。抜粋します。
このような状況のもと、当社グループは引き続き積極的な会場新設による市場の拡大と、積極的な資金運用及び賃貸不動産物件の取得等により、収益増加を図ってまいりました。その結果、当連結会計期間の売上高は6,122百万円(前年同期比12.7%増)、営業利益は95百万円(前年同期比62.7%減)、経常利益につきましては670百万円(前年同期比104.9%増)となり、
収益増加を図ってきた結果、売上は増えて営業利益は減ったとあります。やはり売上と利益の区別がついていません。ご丁寧に言葉でも説明してくれて、損益計算書でも示してくれているのに6年前の私はこの銘柄を買い付け対象から外すことができませんでした。私の判断力が間違っていたと言わざるを得ません。
反省結果まとめ
今回の反省の結果をまとめます。- 正味流動資産による評価して行っていなかった。
- 損益計算書からは経常利益が増えている事しか分かっておらず、赤字体質が見抜けていなかった
- 赤字体質が見抜けていなかったのは、利益の数字だけを見て売上の伸びと売上原価の伸びの比較と言った見方ができていなかったためである
- 概況の説明から売上と利益の区別ができない経営をしていることも見抜けなかった
今回の教訓
以上から得られた教訓は以下の通りです。
- 損益計算書は上からも下からも読み、数字だけでなく変化とその理由を読み解く
- 概況の説明は経営陣が経営を理解しているかという観点で読む
今回の反省は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
私の書いたベンジャミングレアムの賢明なる投資家の解説が電子書籍になりました!Kindle Unlimitedで読み放題です!